内容証明郵便
目次
はじめに
内容証明郵便とは、クーリングオフなどの場面で聞いたこともあるかもしれませんが、離婚問題・夫婦問題に関連してはどのような場面で使用されるものなのでしょうか。
例えば、配偶者の不倫に対する慰謝料として不倫の相手方に200万円支払えと主張する場合は、言葉で直接伝えてもよいし、普通郵便で手紙を送るだけでも構わないでのですが、一般的にはそういった方法ではなく内容証明郵便を使っての請求がなされます。
ここでは、その内容証明郵便についてメリット・デメリットをわかりやすく説明していきますので、皆様の問題解決にお役立てください。
内容証明郵便のメリット
内容証明郵便には”発送内容と到着を証明してくれる。(水掛け論の防止)”「威圧的効果」「証拠能力」などの効果、メリットがあります。
「発送内容」と「到達」の証明
「発送した文章の内容と到達したこと証明してくれる」とはどういうことかというと、それは、内容証明郵便を発送した書類を郵便局などで保管してくれる事から、後で争いになった時に 郵便局に保管されている書類を確認し、どのような事を内容証明発送時に発送した人が伝えようとしたのかを証明できる、ということです。
つまり、後で「言った言わない」という争いや「書類・手紙を受け取っている、いない」という争いを防止できるということです。また、配達証明をつけると「到着した事」の証明も可能となります。
威圧的効果
内容証明郵便は、一般的に依頼を受けた専門家が作成し、定型的な様式かつ堅い文章で送付されることが多いので、「何かよく分からないけれど大変なことが起きているぞ」という威圧的な雰囲気や一定の不安感を与えることができます。
これにより、相手方に対して「こちらが本気であること」を伝えるとともに、例えば「慰謝料請求を無視したら、タダでは済まないだろう」という気持ちを植えつけることもできるようになります。
内容証明郵便をどのような場面で使うかと言えば、例えば、配偶者の浮気相手に対して「2度と配偶者に会うな!今度会ったら慰謝料を請求するぞ」などといった警告の文書を発するような場合です。
一旦警告したにも関わらず、交際を続けていることが発覚した場合は、より悪質だとして大きな責任を追及していくことになりますが、内容証明郵便を配達証明付きで送付していれば「警告した事実(文面)」「警告した日」「相手方が警告(内容証明)を受け取った事実」「相手方が警告(内容証明)を受け取った日」を、第三者に証明できるようになります。(「証拠能力がある」ということ)
もちろん、「今度会ったら慰謝料を請求するぞ」程度ではなく即座に不倫の慰謝料を請求しても構いませんし、金額は出さずに直接の協議を申し入れても構いません。
それぞれの考え、事情に合わせて対応策を検討していく必要はありますが、最初のコンタクトとして内証証明郵便を用いることが最もオーソドックスで効果的な方法であることは間違いないでしょう。
証拠力
夫(妻)の浮気相手と夫(妻)が不貞行為(性交渉)を行ったという 核心的な証拠が無い場合に内容証明郵便が有効になる場合があります。
例えば、不貞行為(浮気)に関する慰謝料請求を記載した内容証明郵便を送付し、相手方から手紙が送られてくる 場合、よくあるパターンとしては相手方から「浮気は認めるけれども金額を下げて欲しい」という回答を受ける場合があります。
これにより、後日調停・裁判をするのであれば、発送した内容証明郵便の控えと回答として受け取った書面の両方を証拠として用いることができるようになります。
内容証明郵便のデメリット
内容証明郵便にはメリットばかりでなく一定のデメリットもあります。内容証明を効果的に利用するためにはこのデメリットも正しく理解しておく必要があります。
相手を怒らせてしまう
内容証明のメリットの一つとして「威圧的効果」を挙げましたが、文章の書き方や相手方の性格によっては、宣戦布告的な状況に陥らせてしまう可能性があります。
使い方を誤ると、相手を怒らせるだけで解決が長引いてしまう可能性も十分秘めていますので、そういった点もキチンと把握しておきましょう。
但し、「何のリスクもなく確実に慰謝料が取れる内証証明郵便を出したい」と思っても、そんなに都合良くはいきません。どんなに柔らかい文面にしたところで、「慰謝料を請求する」という行為自体が相手方を刺激させる行為であることを自覚した上で請求する必要があります。
相手を怒らせてしまう事自体を強いデメリットとして感じてしまう方は、内容証明郵便での請求には向かないと考えられますので、それらの点もよくご検討ください。
証拠として逆に利用されてしまう可能性
内容証明郵便には一定の証拠能力が認められますが、反対にこちらが記載した事実も相手方は証拠とすることができます。
そのため、例えば脅迫めいた記載をしてしまうと、反対に相手から慰謝料請求されかねません。また、客観的に証拠といえない事実を根拠として慰謝料を請求したような場合は、 相手方から反対に「証拠がないな」と勘ぐられてしまいます。
その為、常に証拠を相手方に与える事も考えながら将来を見据えて内容証明を作成し、発送する事になりますが、残念なことに専門家が関与した場合でも内容証明が証拠として逆利用されてしまうケースはたくさんあります。
なぜこのように内容証明作成の専門家が失敗してしまうかといえば、それは、ひとえに依頼者とのコミュニケーション不足が主な原因と考えられます。
我々Riaの会員は、お客様とのコミュニケーションに、じっくり時間を割いて対応いたしますので、内容証明郵便の利用を検討中の方はお気軽にご相談下さい。
内容証明郵便の記載内容
ここでは「夫婦の一方に不貞行為(浮気)があった」という前提で内容証明郵便の具体的な記載方法を説明していきます。内容証明郵便の場合、以下の点に気をつけて文章を構成していくことになります。
行為(不貞行為を行ったこと)
不倫を行った者の行為といえばもちろん不貞行為であり、これをもっと具体的に言えば「性交渉・SEX」ということになります。この行為があったことを前提として慰謝料を請求していくのですから、ある程度「確からしい」と考えられるくらいの情報・証拠は用意しておきましょう。
「調査会社の報告書」「性交渉を匂わすメール」「浮気を認めた直筆の誓約書」 等があれば、ある程度の根拠に基づいて請求しているものと考えられますが、「夫が会社で特定の女性と楽しく会話しているのを見た」程度の情報であれば、逆にこちらが「不当請求だ!」などと言って責任追及されかねません。
不倫を行った者の行為について記載するときは「いつ」「どこで」「誰が」「どんな行為を行ったのか」という点を明確にすることによって、請求の信憑性を高めることができますので、できる限り正確な記載を心掛けましょう。
故意・過失(配偶者がいると知っていたこと)
不倫の慰謝料を請求する場合には「相手方が”配偶者がいることを知っていた上で性交渉に及んだかどうか」が重大なポイントとなります。
従って、請求するときは「配偶者である山田太郎に妻がいることを知っていながら・・・」と言った具合に、不倫に当たることの認識があったことを前提とする文章を記載しておいた方がいいでしょう。
ちなみに、不倫の請求を受けた者の多くは「配偶者に妻子がいるとは知らなかった」などと言うものですが、慰謝料を請求する側とすれば、どうやって「知っていたこと」を証明するかも重大なポイントとなります。
例えば、「同じ会社の同僚で、部署を同じくして働いていた」などの事情があるのなら、その点を突いて「知らないはずがない」と強く言うことができますし、メールの文章の中に夫や妻がいることを前提とする文章があるのなら、その文章を証拠に「知っていたはずだ」と言うことができます。
損害の発生(精神的苦痛を受けたこと)
慰謝料の請求は、夫あるいは妻としての権利や、子供・配偶者との生活において幸福を追求し保持する権利を侵害され、精神的苦痛を受けたことが前提となりますので、このことを記載しておく必要があります。また、慰謝料は法的な請求なのでその根拠条文(民法第709条、710条)も掲げておきましょう。
条文の記載がなくても、最低限「不倫の慰謝料請求」であることさえ記載されていれば法的な請求としては事足りると言えますが、心理的な意味での「説得力」は確実に増すと考えてよいでしょう。
因果関係
不貞行為という「行為」と、それに伴って発生した「損害(精神的苦痛)」に関しては「因果関係」が認められなければなりません。
たとえば、仮に不貞行為があったとしても、その当時に法律上保護されるべき夫婦関係が存在していなかったのであれば(夫婦関係が破綻していたのであれば)、そもそも法律上の損害は発生するはずがない、ということになってしまいます。
だからこそ「法律上保護されるべき夫婦関係(婚姻関係)が不貞行為があった当時に存在していたのかどうか」は重要なポイントであり、多くの不倫問題ではこの点が問題となっています。
但し、「夫婦関係が破綻していたかどうか」という点は、慰謝料請求を拒否する者が立証責任を負う問題なので、請求する側は原則としてこれらの事実を説明する義務はありません。
ただし、現実の協議の中では「破綻していなかったこと」を明確に説明できれば、慰謝料請求を成功に導く可能性は確実に高くなりますので、請求者側は「不貞行為の当時に有効な夫婦関係を前提とした様々な事実」を説明できるようにしておいた方が良いことはもとより、これらの事実を内容証明郵便に記載しても効果的でしょう。
前述の「有効な夫婦関係を前提とした様々な事実」としては、例えば最もオーソドックスなものに「同居」という事実があります。一見当たり前のような事実で見落としがちですが、同居していれば「夫婦関係が存在しているもの」と考えるのが普通なので、この点を内容証明に記載するだけでも、相手方は「夫婦関係は破綻していた」とは言いにくくなるでしょう。
その他、「誕生日のプレゼントをもらった」「一緒に旅行に行った」などの円満な夫婦関係を示す出来事を記載することはできますが、これはあくまで相手方が「夫婦関係の破綻」を主張したときだけで構いませんので、あまりこれらの点に気を取られすぎないようにしましょう。
何を主張していきたいのか
「何を主張していきたいのか?」は最も重要な点です。例えば、慰謝料を全面的に主張したいという方は、この点を慰謝料請求を強く主張する必要がありますし、浮気相手に対し「夫(妻)に接近するな!」という点を強く主張したい場合はいきたい場合は、その点を強調する必要があります。
何が「メイン」で何が「サブ」なのか、この点の戦略を請求の前にしっかり組み立てましょう。
期限
内容証明で何らかの請求・要求をする場合は、期限を設ける必要があります。例えば、不倫の慰謝料請求において「本書到達後、1週間以内に回答してください」などと回答に対する期限を設けても結構ですし、もっと直接的に本書到達後1ヶ月以内に下記口座に慰謝料を振り込んでください」と求めても良いでしょう。
なお、この期限までに求めた要求に従わないときはどうするのかも、記載しておきましょう。一般的には「期限を過ぎても回答のない場合は法的措置(調停・裁判)をとります」という趣旨の文章を記載することが多いようですが、事案によっては相手方を怒らせないよう、要望だけに止めておいたほうがいいと考えれるケースもあるとおもいますので、文章は慎重に記載していきましょう。
内容証明郵便の発送方法
内容証明郵便には、いくつかの決まりがあります。 普通の手紙のように好き勝手に慰謝料請求等を書いたのでは内容証明として認められません。
また、海外へ慰謝料請求に基づく内容証明郵便を発送する事はできません。 それでは以下に内容証明郵便に関する一定の決まりをご説明していきますので参考にしてみて下さい。
用紙
内容証明の用紙に制限はありません。日本法令等から発売されている朱色の用紙はもちろん原稿用紙、手紙用の便せんやメモ帳でも構いません。
大きさに関しても特に制限はありません。ただ、相手方に威圧感を与える為にも以下の内容証明郵便のデータを印刷して使用したほうが 良いでしょう。
文字
かな(ひらがな、カタカナ)、漢字及び数字です。 英語は固有名詞のみ使用可能です。
文字数
内容証明の用紙に記載する文字数は、 一行に20文字以内、一枚に26行以内という制限内で 文字数を収めなければなりません。
原稿の枚数
内容証明郵便内容証明の原稿は何枚でもOKです。 しかし2枚以上になる場合には、ホッチキスで綴じて、つなぎ目に差出人の印鑑を押さなければなりません。
言葉では分かりにくいと思いますので、郵便局に行って聞いてみてもよいでしょう。なお、内容証明郵便はこれらの決まりを踏まえた上で、 全く同じ内容の文書を3通作る必要があります。 コピーで構いませんので、パソコンなら3通分プリントアウトして郵便局に持ってきましょう。
※前述の日本法令の朱色の内容証明用の用紙は、複写式になっています。 (用紙に関しては文房具屋で販売されていますので、ご確認ください。)
発送確認
- 原稿 3通 (同じ内容のもの)
- 封筒(相手方の宛名が記載されており、発送者の名前のある封筒)
- 印鑑(間違いとかあれば訂正に必要になります。認印でOKです。)
- 費用(内容証明郵便費用、配達証明費用)
発送費
- 電卓内容証明料(書留扱い)・・・420円
→枚数が一枚増えるごとに250円UP。 - 通常の郵便費用・・・80円(重さ・大きさによる)
- 配達記録費用・・・300円
→受け取りを確認するためにも必要といえます。
以上の合計でおよそ1200円(原稿1枚)、 およそ1450円(原稿2枚)かかることになります。詳しくは、郵便局窓口でご確認下さい。
郵便局における手続き
内容証明郵便の取り扱いは、全ての郵便局でなく、 主要な郵便局でしか取り扱いしていません。 内容証明郵便にしたい文書を、取り扱い郵便局へ持参すると、 文字数などの形式的なチェックがなされます。
そこでは、文書の内容(慰謝料請求の内容、浮気の内容)や是非は問われませんのでご安心ください。 形式的な条件(文字数、押印等)がクリアできると完了。
3通のうち1通が相手方に送付され、1通が郵便局で保管され、 1通が差出人の控えになります。控えは大切に保管しておきましょう。
電子内容証明郵便(e内容証明)
電子内容証明郵便最近では、ワード等パソコンで作成した文書をインターネットで内容証明郵便にする電子内容証明サービス(e内容証明)も行われています。
このe内容証明(電子内容証明サービス)」のホームページを利用すれば、自分のパソコンで作った内容証明をネット経由で新東京郵便局に送付し、同郵便局が印刷・梱包した後、郵便物として相手方に送付することができます。
この電子内容証明は、郵政公社が提供するサービスであり、その効果やセキュリティーは、一般の郵便局で送る内容証明と全く変わりません。 詳しくは、電子内容証明郵便サービスのHPをご確認下さい。 通常の内容証明郵便よりも制限が少なく、文章の量を気にすることなく、例えば不貞行為(浮気)に対する慰謝料請求ができます。
内容証明発送に当たっての「覚悟」
内容証明郵便を出そうと考えられたあなたはこれから大変な戦いが始まると覚悟しましょう。 例えば、配偶者の浮気相手(男)に対して慰謝料請求をすることを妻が知れば「私に請求するのは構わないけど相手に請求するのだけはやめて!」などとせがまれるケースもありますが、それでもなお慰謝料請求を強行する意思はあるでしょうか。
また、相手方が開き直って「お前がしっかり嫁さんを見ていないからこんなことになるんだろうが!」などと悪態をついてくることもあれば、「元々夫婦関係は壊れていたんだからあなたに慰謝料を請求する権利などない!」などと、妻と不倫相手の男性がタッグを組んで反論してくることもありますが、そんなときあなたはどういう決断を下すのでしょう。
夫婦関係の継続?それとも離婚?どちらに進むにしてもそれなりの覚悟が必要になってくることは間違いありません。当たり前のようですが、自分の権利を主張するためには最低限「諦めない気持ち」が必要となります。
私たちRiaの離婚専門家は諦めないあなたのサポーターとして精一杯サポートしますので、内容証明郵便の発送をはじめとして、離婚問題夫婦問題にお悩みの方はお気軽にご相談ください。