離婚の公正証書
公正証書とは?
公正証書とは、元夫(元妻)が養育費や慰謝料などのお金を支払わなくなった際に、相手の意思に関係なくお金を取ること(強制執行)ができる書類のことを言います。
通常、口約束や私文書での契約書だけしか作成していないと、いざというときに多くの時間とお金と精神的負担をかけなければ、強制的に取り立てる強制執行をすることができません。
しかし、公正証書さえ離婚前後で作成しておけば、下記のように話し合い・調停・裁判などの面倒な手続きをしなくても、直ちに養育費や慰謝料などのお金を取得できるようになるのです。
なお、養育費に関しては、元夫(元妻)が会社員や公務員の場合、相手の意思関係なくお金を毎月の給与の50%を限度として、元妻(元夫)の銀行口座に振り込んでもらうようにすることができるようになっています。
当事者が自分で公正証書を作成する場合の手順
離婚する二人が公正証書を作成する場合は次のような手順を経る必要があります。
- 当事者間で離婚の条件(契約内容)の取り決めをする
- 公証役場に公正証書の作成の依頼をする
- 公証役場の公証人と打ち合わせをする
- 公証人が契約の条文の原案を作成する
- 公証人と当事者が契約書原案について再度打ち合わせをする
- 公正証書を作成する日(手続きをする日)を決める
- 公正証書の作成日に当事者二人が公証役場に赴き、公証人の指示に従って手続きをする
- 公正証書完成
公正証書作成に関する手続きのうち、打ち合わせの段階では夫婦揃って行く必要はありませんが、正式に公正証書作成の手続きを行う段階では、二人揃って公証役場に赴く必要があります。
公証役場で実際に手続きをする際は、公証人が予め打ち合わせをしておいた契約条項を当事者に読み聞かせ、間違いないかどうかを確認します。
間違いがなければ、公証人が当事者二人に公正証書原本への署名捺印を求めてきますので、所定の欄に署名捺印します。その後、公証人に所定の公証役場手数料を支払えば、権利者側(養育費等のお金を受領する側)には公正証書の”正本”、義務者側(養育費等のお金を支払う側)には公正証書の「謄本」が手渡されます。
※ちなみに公証役場には公正証書の「原本」が保管され、正本・謄本等を紛失したときはこれを元に再発行してくれます。公正証書には「原本」「正本」「謄本」の三種類がありますのでこの機会に覚えておきましょう。
公正証書の作成を専門家に依頼した場合
Riaでは、書類作成の専門家である行政書士が公正証書を作成を代行しています。作成の手順としては、まず専門家との事前相談を前提として当事者間において離婚の協議をしてもらいます。
次に協議で決定した事柄を行政書士が聞き取り、「公正証書作成の委任状」という形に仕上げて、当事者双方に確認を求めます。
当事者が特に異論を述べなければ、当事者双方から署名捺印(実印)した委任状と共に、印鑑証明書・戸籍謄本等の必要書類を受け取ります。
行政書士は当事者から受け取った必要書類一式を公証人に提出し、打ち合わせを行った上で離婚の公正証書を完成させます。
専門家がつけば、当事者は大まかな離婚の条件さえ説明すれば原案が出来上がるばかりか、契約の内容に不足がある場合は適切なアドバイスが受けられるので、素人による様々なミスを防ぐことができます。
また、離婚の専門家は諸事情に応じて公正証書の作成に先立って私文書での契約書を作成し、署名捺印を求めたりもするので、そのような対応をしていれば、公正証書作成の直前になって「やっぱりやーめた」という言わせないようにすることができます。
更に「離婚する当事者が揃って公証役場に行かなくてもいい」という大きなメリットがあります。これから離婚しようとする二人は一緒に公証役場で手続きなどしたくないはずです。
ライアではほとんどの場合、専門家が公証役場での手続きを代行しておりますので、公正証書作成に関してお悩みの方はお気軽にご相談下さい。
養育費の取り決めは必ず公正証書に
離婚時の取り決めの中で最も重要なのが養育費です。子供を公立や国公立(現在は独立行政法人)だけにいかせるだけでも、その費用は最低1120万円かかると言われていますが、これには塾代や日々の生活費などは含まれていませんから、どれだけ子供のお金がかかるかが伺い知れるところではないでしょうか。
また、厚生労働省の統計によると養育費を離婚後に滞納する人の割合は約68.1%にも上るとされています。このような養育費滞納の現状を考えれば、必ず公正証書にしておいたほうがいいことは間違いありません。
その他、一括では支払えない慰謝料・財産分与の分割に関しても、 途中支払が滞ったことも考え、調停・裁判をしなくとも 一括返済してもらうようにするためにも公正証書にしておいた方がいいでしょう。慰謝料・財産分与等の分割払いにおいては、万が一の時に全額を回収できるようにするための「期限の利益喪失約款」を付けるのを忘れないでください。
※期限の利益喪失約款とは
借金の分割払いや割賦販売など、債務者が分割払いで債務の返済をする契約において、債務者が約束どおり返済期日に返済をしなかったような場合に、債権者が債務者に残りの債務全額を一括払いで支払うよう請求することができる旨の特約。
公正役場手数料
公証役場で手続を行う際の手数料は下記の表のようになります。目的の価格とは、その公正証書を作る目的となっているものの金額です。
例えば、慰謝料が50万円、財産分与が100万円、養育費(5歳から20歳までの養育費と仮定)が 月々3万円とした場合の「目的の価格」は、慰謝料・財産分与はひとまとめにできるので150万円。 よって公証人手数料は7000円になります。
一方養育費は「3万円×12(箇月)×15年」としたいところですが、最高で10年までしか目的の価格を求める上で対象にできないので「3万円×12(箇月)×10年」という計算式となり、これによって求められる360万円が「目的の価格」となります。
これを下記公証役場手数料の表に当てはめると、養育費に関する公証役場手数料は11,000となります。
よって、慰謝料・財産分与の7,000円と養育費の11,000円を合算した18,000円 が公証人の手数料となります。(正確にはこれに紙代等が加算されます)
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公正証書作成時の注意点
公正証書を作成するに当たって気をつけなければならないのは 「人の心」です。 「契約は一旦決めたらスピーディーに」とよく言われると思いますが、一般の方にとって公正証書の作成に関する手続きは普段の生活とは全く異なる作業であるばかりか、手続きをする公証人も積極的にアドバイスしてくれるというわけではないので、取り決めには相当の時間を要してしまいます。
時間が経過するごとに人の気持ちは変わってきます。一旦取り決めをしても、時間の経過と共に「やっぱりあの取り決めはしたくない」とか「やっぱり納得がいかない」などの意見が多く出てくるものです。
そういった手続き遅延による気持ちの移り変わりを防止したい場合は、ライアの離婚専門家の活用をご検討下さい。
ご依頼いただいた場合は、離婚契約書原案の作成から公証役場における手続きの全てを代行し、完成した公正証書をいち早くお届けすることができますのでお気軽にご相談下さい。